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その他 : 高橋哲哉氏、光田康典氏によるソーマブリンガークリエイターズボイスが公開!
投稿者 : kookai 投稿日時: 2008-02-25 02:28:45 (2749 ヒット)
高橋哲哉氏、光田康典氏によるソーマブリンガークリエイターズボイスが公開されました。

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1.DSというハードで
モノリスソフト初のDSタイトル
高橋. 今作はモノリスソフト※1にとって、携帯機向けとして本格的に制作する初めてのタイトルです。当時、ちょうどDSが出た頃だったので、DSで何か面白いものが作れないかというところから企画が立ち上がりました。そのとき、自分がプロデュースするんだったら、音楽は光田さんしかいないよねってことで、お願いできないか電話をしたのが始まりです。光田さんとは付き合いが長くて、最初に知り合ったのは『クロノ・トリガー』※2のときですよね。
*1. モノリスソフト:ゲームソフト制作会社。代表作は『ゼノサーガ』シリーズ、『バテン・カイトス』シリーズなど。
*2. 『クロノ・トリガー』:スーパーファミコン向けのRPG。1995年3月にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売。高橋哲哉氏はグラフィックディレクター、光田康典氏はメインコンポーザーとして制作に参加。

光田. 『クロノ・トリガー』は、コンポーザー※3としての僕のデビュー作です。高橋さんとはその後、一緒に『ゼノギアス』※4とか『ゼノサーガ』※5をやらせてもらいました。高橋さんとは、もう10年以上の付き合いになるんですが、今回もこれまでどおり音楽については完全にまかせていただきました。
*3. コンポーザー:作曲家。
*4. 『ゼノギアス』:スクウェア(現スクウェア・エニックス)から1998年2月に発売されたRPG。高橋哲哉氏が監督・脚本、光田康典氏が作曲・編曲を担当。
*5. 『ゼノサーガ』:モノリスソフトが制作するRPGシリーズ。

高橋. 光田さんは、純粋にコンポーザーさんとしてゲームのいろいろな場面を盛り上げたり、ゲーム本編そのものを牽引する曲を書いてくださる方なので、それがお願いした大きな理由なのですが、今回DSで作るにあたっての技術的な側面も理由としてあるんです。たとえ曲は良いものを書けてもそれをDSというハードでイメージ通りに鳴らすのは、実はとても難しいんですよ。で、それを両立できる人となると彼しかいないだろうと。

光田. せっかくやるならDSで最高を目指しましょうと、2人で電話で話しましたね。

DSだからこそ
高橋. 最初はスタンダードなRPGの形で試作していたんです。ただ、みんなで遊ぶとか短時間でも楽しめるといった、「DSだからこそ」ということを考えると、アクションRPGの方が目指している作りたいものを体現できるのではないかと考え、それまで作っていたものを途中でポンと捨てて、一から作り直しました。結果的に、爽快感とかスピード感といったアクションならではの気持ちよさが出せたと思います。
それと今回はシナリオの書き方でも初の試みをしているんです。今まで据え置機で作るときは、シナリオが先にあって、それに対してシステムをこう作って、みたいな作り方だったのですが、今回はまず、ゲームとしてこういうものを作りたい、で、物量的にはこのくらいのものだったら作れそうだという大体の見積もりを出して、その上でこれだけの数の章、これだけの数のダンジョンができる、それに対してキャラクターを8人作って、さあ、どうシナリオを割っていこうか、と。だからあるシナリオを見せたいがためにゲームの方を合わせるのではなく、今回は作りたいゲームの形がまずありつつ、その上に自然な形で今作のテーマや世界観のようなものを作り上げて行けたのではないかと思います。

2.世界観をささえる音楽
ソーマの満ちる世界
高橋. 今作の物語の舞台となるのは、ソーマというエネルギーが全てをつかさどる世界です。ソーマという言葉は、語源的には霊的なものであるとか神の霊薬…いわゆるお酒であるとか色々な解釈があるんですが、そのあたりのニュアンスを抽出して、世界の中で普遍的に満ちているエネルギーみたいなものに当てはめてみようというのが初めのイメージでした。この世界というか惑星の設定については、じつは最初から発展性や拡張性を見据えていくつかプランがあるんです。1作目である今作では、世界全部を使い切る形ではなく、いくつかあるストーリーラインの中からアクションRPGに一番向いているストーリーとして、惑星全体を取り巻くリング※6とそれに関係する出来事をピックアップしています。
*6. リング:作中で舞台となる惑星を取り囲む、環状の巨大建造物。

光田. オープニングで流れる 「リング」という曲は、プロローグで最初に出てくる詩の文章を高橋さんからもらったときにすぐできたんですよ。詩がすごく印象的で、最初はピアノで書いていたんですけど、オープニングの映像が、なにか光のようなものが空から降りてくるという内容だったので、透き通った感じを出せるといいなと思って3人の女性コーラスを多重で録って、最終的にああいう楽曲になりました。

高橋. 冒頭で、このプロジェクトを始めたときから彼に音楽を依頼しようと決めていたって言いましたけど、ある意味、音楽ありきでゲームのベース部分を作っていた感はあります。逆を言えば、光田さんでなければこのプロジェクトはできないのではないか、と考えていたんです。

光田. 光栄です(笑)。最初、タイトルを聞いたとき、高橋さんが作るってことで神とか魂とかそういう見えないエネルギーみたいな壮大なテーマがあるのかなと想像していたんです。実際シナリオをもらってみると、たしかに大きなテーマとしては“ソーマ”にみんなが導かれて動いているんだけど、同時に個々のキャラクターの人間ドラマも僕はすごく印象的だなと感じたんです。それで今回はいつもより人間ドラマに重点を置いて作ってみたらどうなるかなというので、僕の中でも、ちょっといつもとは異なる作り方をしました。

3.ゲームシステム
戦闘が気持ちいいアクションRPG
高橋. 今作はアクションRPGとして、とにかくプレイしていて気持ちのいいものにしよう、ということを徹底的に考えました。仲間と連携して攻撃するのが今作のポイントなのですが、敵にダメージを与え続けると、連続攻撃のチャンスになるブレイクというのが発動します。ブレイク中は敵は動けないので攻撃し放題になるのですが、そのブレイク時に技を入れた時に得られる爽快感には特に気を遣いました。使用する技によって、敵が空中に勢いよく吹っ飛んだり、吹っ飛んでる敵にたたみ掛けるように追い討ち攻撃をしたりと、シンプルで、かつ爽快感のある戦闘というのが実現できたと思います。HPの減りも分かりやすくして、技を入れたらこんなに減ったんだっていうことも視覚的に気持ちよく感じてもらえるようにしました。
アクションRPGといっても色々あって、例えばパズル的なものを配置してそれをクリアさせていくようなものもありますけど、今作はなるべく戦闘のみに集中してもらいたくて、ギミック※7と言うか、それをやらないと先に進めないっていうようなものを極力廃止して、とにかく敵を倒す気持ちよさとか、倒し方を見つける面白さに集中してもらえるようになっていると思います。

*7. ギミック:仕掛け。

光田 戦うこと自体が気持ちいいゲームに仕上がっているので、曲も効果音も疾走感があってなおかつ気持ちいいものにしたいというのが、僕の中での音作りのテーマでした。今作ではそこに注力しながら、何度も何度も曲や効果音を作り直しましたね。

高橋. あと戦闘を楽しんでもらうための工夫としては、例えば、ある程度戦闘に慣れてからは、プレイヤーにとって重要でない敵は避けていってしまうこともあると思うんですが、それだと敵の存在意義がなくなってしまうので、そうさせないために、敵を倒したら、もしかしたら今持っているアイテムよりもいいものがもらえるかもしれないという工夫をしてあります。普通は同じ武器ならパラメータも一緒だから、同じものを手に入れても荷物が増えるだけであとでまとめて売ってお金にするぐらいしかないんですけど、今作は同じ武器でも、基本的な数値以外に固有の効能を持たせているので、敵が落とした武器が自分の装備しているものと同じでも、そっちの方が断然強いなんてこともあるんです。戦闘そのものを楽しんで欲しいアクションRPGだからこそ、敵を見つけたらみんな倒さないと気がすまないという仕組みになっています。

多彩なカスタマイズ
高橋. やっぱりアクションRPGは 選べる武器や特技が多彩にあったほうが面白いだろうということで、武器だけでも300以上用意しました。何度も何度も遊んでもらえるようにしようというのが最初からのコンセプトとしてありましたので、1回クリアしただけでは全ての武器は集めきれないし、特技に関しても全部覚えきれないようにしてあります。さらに、武器と特技の組み合わせによっていろんな攻略パターンが存在しますし、本来の使い方以外にもこんな使い方があったんだ、というような特技も用意してあります。
また、操作するキャラクターは 特技を自由にカスタマイズできるようになっています。開発初期は、覚えた特技は一度ポイントを割り振ったらやり直しがきかないつくりだったんですが、開発を進めていくにつれて、やっぱり何度もポイントを割り振れたほうが、いろんな武器を試せるし、戦闘の幅も広がって面白いということになり、結果的に、いろいろ試行錯誤しながら自分なりの攻略法を見つけられるようにしています。

マルチプレイ
高橋. 今作は、シングルプレイだけでなくDSワイヤレス通信を使ったマルチプレイもできます。一番の特徴は、いわゆる「マルチプレイモード」としてメインシナリオと分離したものではなくて、進行度合いの違う人とも一緒にゲーム全体の流れの中で遊べるようにしたところです。基本的にはリーダー※8になったプレイヤーの進行に沿ってシングルプレイと同じシナリオを進めていくことになるんですけど、参加しているどのプレイヤーも楽しく遊べるようになっています。例えば、ボスを倒して得られる宝箱の中身は毎回違うので、もう1回ボスを倒したらもっといいものが手に入るかもしれないということで、進んでいるプレイヤーは戻って遊ぶ楽しさがあるし、逆に、遅れているプレイヤーは他のプレイヤーからいいアイテムをトレードでもらうことができるので、自分のシングルプレイに戻ったときに有利に先に進めるようになったりと、マルチプレイで得たアイテムを自分のシングルプレイに持ち帰って活かすことができるようになっています。

*8. リーダー:マルチプレイでグループを作成したプレイヤー。

4.イベント
昔ながらのイベントシーン
高橋. 今回イベントシーンでこだわったのは、いい意味で映像に頼るようなやり方はやめようということです。モノリスといえばムービーという印象があるかも知れませんが、今回はムービーを使うのはやめて、どちらかというと昔ながらのイベントの作り方で表現してみたんです。派手なプリレンダムービーではなく、ポリゴンキャラクターが演技をするという古典的な見せ方の中で真摯に作って、それでも足りない部分は音楽に補ってもらおうと(笑)。

光田. どうしてもアクションのほうが注目されがちですけど、イベントもけっこう見どころですね。とにかくキャラクターがすごく細かい動きをしていて、ドラマチックなんです。

高橋. 当初は、容量の都合もあるので、イベントは顔グラフィックとテキストだけにしようかとも思ったんですが、ふと気付くとそれだけでは満足できずにキャラクターを動かしてるんですよね。結局、ふたを開けてみるとほとんどそれをやっちゃってて(笑)。イベントをそこまで作りこんだので、音楽の演出とかも普通にダラダラ流すだけではなくてイベントの展開とシンクロさせたくなって、気付きづらいかもしれませんが、実は自然なタイミングでボタンを押していくと曲が・・・

光田. ピタリと合うようになってます。速読しなければ。普通の速さで読んで、セリフを進めていくと曲がガーッと盛り上がるときに場面がちょうど変わったりするので、なるべく飛ばさずに読んでもらいたいですね。

5.サウンドへのこだわり
章ごとに楽器を設定
光田. 今作は物語がいくつかの章に分かれていて、地方色豊かな都市が舞台になっています。それで、都市ごとの特色を出すために、楽曲を作る上で章ごとに決まった楽器を入れることにしたんです。例えば、砂漠の章だとインドのタブラ※9とシタール※10という楽器を、街、フィールド、ダンジョンのどこでも必ず入れたり、機械都市の章であればインダストリアルな楽器、金物系とかエレクトリックなギターを使ってみたり。そういった意味で章によって音楽の色がガラッと変化するので遊んでいても楽しいんじゃないかなと思います。

*9. タブラ:インドの民族楽器。打楽器の一種で高音用と低音用の2種類の太鼓で演奏する。
*10. シタール:インドの民族楽器。弦楽器の一種で、演奏用の弦と共鳴用の弦がある。

高橋. 砂漠のフィールドで、マリンバ※11から始まって、いろんな楽器が重なっていって段々盛り上がってくる感じがするのがすごく好きですね。

*11. マリンバ:打楽器の一種。木製の鍵盤を撥(ばち)で叩いて音を出す。

光田. そのマリンバは砂漠の砂をイメージしているんです。砂嵐がひどくなったり弱くなったりっていう。僕も気に入っている曲の一つですね。その他ですと、 ラルゴブリッジのフィールドも好きです。ファルズフの隊員たちが人助けのために戦いに行く勇敢な姿勢とその曲がすごくマッチしていて。このシーンはフィールドで戦っていても、なんか感動するんです。

ちなみに今作はフィールドがかなりの広さなんですよね。フィールドにいる時間が長くなるので、必然的に曲を長くしないと飽きられてしまうんです。なので、曲が1回ループ※12するまでをかなり長くしていて、実は1曲に色々な楽曲の構成を詰め込んでいます。

*12. ループ:メロディの繰り返しパターン。

DSが可能な最高の音質を
光田. 音なんてDSだから据え置き機より簡単に出せるだろうって思われがちかも知れませんが、据え置き機で鳴らす方がある意味では断然楽なんです。テレビと違ってDSのスピーカーだと低音部分が出にくいんですね。楽曲の底辺を支えるベース部分が消えてしまう。そうすると、音楽的に成立しないことがけっこうあるんですよ。それで、今回はDSのスピーカーの特性を調べるところから仕事を始めました。DSスピーカーの音をマイクで録音して、どの帯域※13にピークがあるとか、低域はどこから聞こえ始めるとかっていうのを全部調べて、それを踏まえて、音の一番鳴りのいい帯域で曲を書いています。
あと、ヘッドホンでもしっかり聞いてもらえるように、スピーカーで聴くかヘッドホンで聴くかを設定で選べるようになっています。そのために、今作ではスピーカー用とヘッドホン用で、楽曲を2回ミックスしてあります。スピーカーとヘッドホンでは出せる帯域が異なるので、それぞれに応じて音を調整しているんです。例えばベース音はDSのスピーカーで出せる一番低い帯域で入れておきつつ、ヘッドホン用ではもっと低いベースを入れたりしています。

*13. 帯域:周波数帯域。伝播に利用する周波数のうち、一番低い周波数と一番高い周波数の間の周波数域のこと。

早期購入者特典
光田. 今回、早期購入者特典としてミニサントラCDがつきます。DSの音源からではなくて、イメージアルバムみたいな形で主要な曲をMIDI※14音源から新たに録り直して特別に制作したCDです。特典以外では聴くことの出来ない音源ですので、ぜひ手に入れていただければと思います。それと、本作のサウンドトラック※15も用意しています。ゲーム内で使用されている全曲に加えて、ボーナストラックとして4曲が入った3枚組のアルバムです。ボーナストラックの4曲は、DSに落とし込むときに容量の関係で曲が短くなってしまったものや音色がカットされたものなど、特に原曲からの印象が変わったものを選んで入れてあります。元々イメージしていたのはこういう曲だったんだなっていう感じで聴いていただけるとうれしいですね。

*14. MIDI:電子楽器の演奏データを機器間で互換するための規格。
*15. サウンドトラック:『ソーマブリンガー オリジナル・サウンドトラック』(CD3枚組)。2008年4月2日リリース予定。

6.メッセージ
光田. アクションRPGっていう言葉だけで、難しいとか反射神経がないと先に進めないんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。が、そのあたりのバランスはよくとられているし、ロールプレイング要素の中に物語性がしっかりあるので、お話と音楽とアクションが十分堪能いただける作品に仕上がったと思います。ぜひ多くの方に遊んでいただきたいですね。サウンド的には、時間を掛けてじっくりと作り込めたので個人的にはかなり満足をしています。音楽を聴きたいっていうだけでプレイしていただくのでもいいですし(笑)、とにかく全曲聴いていただきたいです。

高橋. いろんな方に遊んでもらいたいという思いがあって、アクションRPGの経験のない方でも先に進められるように難易度調整のバランスには気を遣って作っています。全くの新規タイトルではあるんですけれど、敷居が高いようなことは一切していませんので、ぜひ手にとっていただきたいです。

個人的な話になりますが、僕は小学生の息子と娘がいるんです。今作はこの2人と僕とで、マルチプレイで一緒に冒険できるんですよ。同じボスを倒したのに、「お兄ちゃんに金の宝箱が出て、なんで自分はただの布ぶくろなの!」って喧嘩したりするんですけども(笑)、そんな風に、兄弟、家族、友達同士で遊べるようになってますので、ぜひ皆さんで持ち寄って遊んでみていただければと思います。
あとクリア後の要素として、自動生成系のダンジョンが3つ追加されます。単にダンジョンがあるだけじゃなくて、本編を補うエピソードもそこで展開しますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。またクリア後は本編の難易度も選べるようになって、さらに強い敵に挑めるという楽しみも用意していますので、何度も遊んでいただければうれしいです。